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自筆証書遺言の簡略化③

前回のお話の続きです。

 ボクの好きな沖縄で、丁度タイムリーな遺言の話題として、最高裁判決が出されましたのでご紹介します。 

平成28年6月3日、最高裁第2小法廷は「花押は押印の要件を満たさず遺言書は無効」と判断しました。民法上、遺言書へは「押印」を必要と規定しています。その「押印」に代えて、「花押」が認められるかどうかが争われたのです。
ところで皆さん、「花押」とは一体何かご存知でしょうか?行為としては、サイン(署名)のイメージですが、花のように美しく署名したものとの意味があるそうです。古くは、織田信長、豊臣秀吉等戦国武将から、現代でも歴代の首相や閣僚、現在の安倍晋三首相も花押を使用しています。あくまでもサインの一種であり、印鑑のように押すものではないということが、ポイントのようですね。
安倍首相の花押はコチラ http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/96.html
そもそも遺言の偽造や変造を防止するため、大変厳しい要件を課していることは以前お話しした通りです。
(2016.4.30付 自筆証書遺言の簡略化① http://www.tarozza.com/330/ )
 判決書で最高裁は、「重要な文書は署名し、押印することで完結させる慣行がわが国にはある」と説明しています。その上で「花押を書く慣行はなく、印章による押印と同視することはできない」として、花押は民法968条1項の「印」の要件を満たさず遺言書は無効,と判断したのです。
 
ここで、自筆証書遺言に「印」が必要とされた趣旨を考えてみます。
 ①本人の遺言を作りたいという明確な意思が、押印という形式的な行為としてあらわれる
 ②押印により,遺言が下書き段階にあるのではなく、完成段階に至っているという意思が読み取れる点にあると考えられます。(伊藤昌司「自筆証書遺言と『印』」判タ667号66頁)

 では花押はそれらの機能がないと言い切れるのでしょうか?
 ①本人だけのオリジナル花押である点から、強固な本人の意思があらわれている 
②花押を添えることで、文書が完成に至っていると認められると考えられなくもありません。つまり、花押は通常の押印と変わらないと,遺言の有効性を認めて良いも言えるでしょう。 

事例などとして、
 ①100円ショップで買える認め印 
②拇印(親指に朱肉等を付けて指紋を押捺すること)は有効でしょうか、無効でしょうか?

 答えは両方とも有効です。更に拇印は判例で結論が出ています(最判平成元年2月16日・判例タイムズ735号212頁)。 

花押は、オリジナリティ度が大変高く、模倣もしにくい点から、サインの一種として利用することは十分可能でしょう。しかし、遺言のように厳格な要式行為を求められる行為については、注意しなければなりませんね。 

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