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京のかばん店「一澤帆布」のお家騒動

素朴で丈夫な布製かばんで人気を集める老舗
「一澤帆布(いちざわはんぷ)工業(京都市東山区)」を舞台にしたお家(相続)騒動で、
先代会長が遺した「2通の遺言書」を巡る真贋を争った問題です。

問題となった「遺言書」は2通。
第1の遺言書は、1997年12月12日付のもので
顧問弁護士が2001年3月に信夫氏が死亡するまで保管をしていた。
第2の遺言書は、 2000年3月9日付のもので
信夫氏が死亡した後、長男である信太郎氏が保管していたと明かした。

遺言書は、法律の規定により、前の遺言内容が後の遺言内容に抵触する場合は、
その部分について撤回したこととみなされます。
即ち、簡単に申しますと「後の日付の遺言が有効でありその内容を優先する」と言うことですね。

今回の一澤帆布のお家騒動は、兄弟間の相続権に関して全く内容が異なり、
しかも100年以上も続いている老舗の経営権にも影響する騒動に発展する遺言書ですから、
骨肉間の争いとなってしまったのです。

最初の裁判では、第2の遺言書を所有する長男の信太郎氏に対し、
遺言書は無効であると、三男の信三郎氏が2001年9月に京都地方裁判所へ提起し、
その後、最高裁まで争われました。
しかし、信三郎氏の敗訴が2004年12月に確定しました。
これで終息するのかと思いきや、
今度は第1の遺言書の利害関係人である信三郎氏の妻が当事者として原告となり、
2007年5月に同様の裁判を京都地方裁判所へ提起しました。
同地裁では、信三郎夫妻は敗訴しましたが、
2008年11月大阪高等裁判所では信三郎夫妻が逆転勝訴、
信太郎氏は上告をしたが、2009年6月「著しく不自然で不合理である」として、
最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は、上告を棄却しこれにより、
信三郎夫妻の勝訴が確定しました。

さて、何故2分するのか疑問が当然に沸いてきます。
大阪高裁での決め手の一つに、筆跡鑑定のやり直しが挙げられます。
今回、信三郎夫妻側は
数多くの事件で筆跡鑑定を手がけた神戸大学の魚住和晃教授等の協力を仰いだようです。
その結果、第
2の遺言書の中で信夫氏本人の筆癖とは異なる文字が発見されました。
それに対し信太郎氏は、
第2の遺言書を書いた当時の信夫氏は要介護状態にあり、筆癖の違いも変動し得る範囲内にある、
と主張しましたが認められませんでした。
信三郎夫妻側の弁護を担当した弁護士は
「第
2の遺言書は誰かが偽造したのだから、字が似ているのは当たり前。
本人しか書き得ない字、本人が書き得ない字があるかどうかで筆跡鑑定はなされるべきだ」
と言っていますし、正にその通りですよね。
遺産争いにおいて遺言書の筆跡鑑定は、決定的に重要な意味を持ちますが、
現状では警察の
OB等が独自の方法で行っているのが現状のようです。
そのため鑑定を行う人によって判断が異なる場合も少なくないと思われます。
昨今の例で言えば、「足利事件」のように過去のDNA鑑定の結果が翻った例もあります。
判決の結果を左右する鑑定の信憑性を高める体制作りは急務ではないでしょうか。
制度上仕方の無いことだとは言え、結果的に
2分されてしまったのは、
最高裁の判断と、「一澤帆布」と「信三郎帆布」に分裂をした、「老舗ののれん」だけだった気がします。
 

○遺言書の外的要因の違い
 
日  付
保管者
書面種
筆記具種
印鑑(*)
遺言書 
第1
1997年12月12日
弁護士
巻紙
毛筆
実印(一澤)
第2
2000年3月9日
三男
便箋
ボールペン
認印(一沢)
*(  )内は、印影。

○裁判の内容
裁判確定日
鑑定
理   由
有効な遺言書
2004年12月
無効といえるだけの十分な証拠がない。
第2遺言書
2009年6月
著しく不自然で不合理である。
第1遺言書

○参考:民法第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1項   
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
第2項    前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

               
 

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